制作の舞台裏

香港POP UP STORE レポート

香港ICCA店舗

5月17日から開催されているPOP UP STORE in HONGKONG。
初日のオープニングイベント出席のため、現地に赴きました。

真夏のような暑い国「香港」。天候だけではなく、そこで暮らす人々もとても情熱的。
国の成長に呼応するかのように、エネルギッシュに活動する人たちがいました。

今回は、日本のいい商品を世界に発信するというコンセプトで香港に施設を構える「HOW」主催のPOP UP STORE。
日本の伝統技術を活用した器を世界へ展開しているAsemi.coとのコラボイベントという形で実現しました。

HOWはもともと倉庫として利用されていたビルをリノベーションし、家具や雑貨の販売の他、カフェや美容室を併設する複合ショップ。
当日、店内に入るとリノベーションしたスタイリッシュで味わいのある空間にICCAの家具が心地よく並んでいました。

ICCA香港店舗

ICCA香港店舗

ICCA香港店舗

ICCA香港店舗

 

現地メディアからの取材も受け、ICCA初の海外メディアに掲載される予定です。
メディア編集者の方がInstagramを通じてICCAのことをご存知で、改めて国境の垣根がなくなっていることを実感。
興味を持って取材して頂いたため、ICCAの魅力をうまく引き出してくださいました。

 

香港取材シーン

 

トークショーでは、ICCA代表の酒井と、Asemi.co代表の石黒氏が「LIFE GOES ON」=サステナビリティというテーマで登壇。

 

ICCA香港トークショー

ICCA酒井がお話した内容を簡単にまとめると以下のような形、ご興味がある方はどうぞ。

-今回のテーマであるLIFE GOES ON(=商品や技術のサステイナビリティ、持続性)についてはどう思いますでしょうか。

サステナブルであるということは、自然に対する礼儀作法だと思っています。
人間は、目の前に子供がいればその子を食べさせるために木を切って畑にするしかない。そして、雨風をしのげるように家をつくる。豊かな生活にしていくために色々なものを作っていく。それは留めることができない自然な人の営みで、それが文明や文化を生んでいきます。

当然並行して自然はなくなっていく。自然がなくなれば、他の生き物たちも困る。だから、使いすぎないようにしようとか、無駄なく使う、長く大切に使う、そういう礼儀が大切。
サステナビリティは、地球で人が営む上で当たり前にすべき礼儀作法だと思います。

だからこそ、すでにあるものを大切にすることが重要ですし、愛されるものを作る技術というのも重要なのではないでしょうか。

– 今回主要テーマである“LIFE GOES ON”は御社のブランドコンセプトと共通点はありますでしょうか。もしあれば、具体例を挙げて教えてください。

ICCAには2つのコンセプトがあります。
1つ目は、「和のデザインの探求」。2つ目は「よりよいつながりをつくる振る舞いの探求」です。
1つ目の「和のデザインの探求」はLIFE GOES ONというテーマに近いコンセプトです。

和のデザイン、和家具と聞いてみなさんが思い浮かべるものはどんなものでしょうか。例えば和家具ですと、昭和のちゃぶ台を思い浮かべる人もいれば、武家屋敷にあるような細工の細かい重厚感の在る家具を思い浮かべる人もいます。人によってイメージが違います。

和という言葉は、融和の和。和えるという意味があります。異なる世界観のもの同士を和えて一つの世界観に落とし込むことを和といいます。

だから和のデザインというのはその時代によって、常に変化してく、そういう類のものだと考えています。

だから和のデザインの探求という言葉にしているのですが、私たちがやっていきたいことは、日本という国で生まれてきた様々なものやデザイン、文化、それらを軸に据えて、他の国のいい部分や、いま私たちが美しいと感じる感性・暮らしのあり方、そういうものを和えて、現代に暮らす人に向けて表現していく。

日本にある素晴らしいものやことを、形を変えて現代に伝えていくという意味では、LIFE GOES ONなのかなと思います。

-自分の会社を設立するきっかけをお聞かせください。

僕は”家族のつながり”というのが人生のテーマになっているのですが、そのテーマが降りてくるきっかけになったのが、7.8年前くらいにやっていたとあるプロジェクトの大失敗です。

このブランドを始める前は、ブランドコンサルティングの会社をやっていました。当時の会社にとってはとても大きなプロジェクトをやることになって、色々あってプロジェクトがうまく進まずに頓挫してしまったんです。

小さな会社でしたので、プロジェクトが頓挫してしまうことは会社の経営が傾くほどのインパクトがあって、すべての責任を負っていたので、社内からは嫌われ者になりました。

社内だけではなくて、クライアントからも突き放されて、悪いことは重なるもので、他のクライアントからもなぜか拒絶されるようになってしまいました。

当時関係していたあらゆる人から拒絶されて、とても落ち込んで、生きてる意味も見いだせないくらいに死んだような日々を過ごしていました。

そんなときでも自分の家族だけは、常に味方でいてくれました。今、妻がいて、子供もいますが、基本的に生きてくれているだけでありがたいというか、存在そのものに価値がある。

当たり前ですが、家族は生きてくれていればいい、ノーバリューでOKというスタンスでいてくれて、その存在に当時すごい救われました。

そんな家族がいたから、少しずつ回復して、次の挑戦ができるようになった。
その経験から、家族のような人の心の真ん中にあるコミュニティ、そこが安定していれば、人は力強く生きていくことができる、そのコミュニティづくりにアプローチしていきたいと思うようになりました。

それから家族のよりよい関係性を作っていく商品やサービスの提供をしていきたいと思うようになって、日本の和家具と出会って、これは理由なくグッと来てしまった。

それで、家族のつながりをよりよいものにする提案を和家具を通じてやっていこうと思って、ブランドをつくりました。

-家具を集める時、どうやって探しているのでしょうか。または集めた家具の状況(取得時)などについてぜひ聞かせてください。製作過程で何か面白いこと、興味深いこと、問題があればお聞かせください。そしてそれらをどのように解決されてきたのでしょうか。

古民家を解体している方に譲っていただいたり、解体現場に実際にいって家具を引き取ったり、直接オーナーさんからお譲りいただいたりして集めてきています。

ICCAが取り扱っているものは、昔の高級住宅にあるような、お金をかけて作り込まれた材料の良い高級家具が多いのですが、それでも100年以上前につくられたアンティークですので、引き取った段階ではガラスが割れていたり、木が欠けていたり割れていたり、状態が悪いものも少なくありません。

また、仕入れた段階では、どれも色味が古臭いというか野暮ったい印象があります。

その状態から、しっかりとリペアして、現代の住宅には馴染みやすいテイストへと調整し、仕上げています。
今回のLIFE GO ON サステナビリティというテーマでお話をすると、仕上げ方にもこだわりがあります。

色味を調整していく際に塗料を剥がしていく工程があるのですが、その塗料を剥がす溶剤には、地球にも人体的にも悪いものが多い。私達はできる限り害のすくないエコなものを使用するようにしています。

作業性は劣る上にコストも大幅に上がりますがサステナブルに商品を提供していく上で重要なことだと思っています。

エコな溶剤も使用後はしっかり洗浄して、さらに研磨して、ブラッシングを欠けた上でできる限り残らない形で仕上げをしています。

地球に害がなく、自分の子供が安心して使えるということを一つの目標にして商品づくりを行っています。

-ブランドの強みと特徴を教えてください

ICCAはアンティークの和家具を販売するブランドです。
大きく3つ特徴があります。

■現代の暮らしに寄り添う和洋折衷な家具
日本の明治・大正・昭和初期(約80~150年前)に作られた和家具を取り扱っています。この時代はちょうど文明開化で西洋の文化が日本で受けいられるようになった時代。それまでのしっかりとした作りの日本家具に、西洋の要素が融和して表現された和洋折衷な家具が多く、今、私たちが見てもとてもモダンで美しく感じられます。

そんな家具を、もともとの魅力を活かしながら、色味を変えたり、金具を付けたりして現代の住宅にもあう、かつ便利に利用できるものになるように手を加えて仕上げています。

■暮らしの日々の振る舞いの提案

家族のつながりがICCAのコンセプトの一つだとお話しましたが、家族との日々の暮らしって綺麗事だけでは済まされないというか、喧嘩ばかりでいいときなんて少ししかないという側面もあります。
そこでICCAは振る舞いを提案することにしています。

例えば「SECOND KITCHEN」というコンセプト商品があるのですが、旦那さんが奥さんに自然とコーヒーやお茶を入れたくなるような、そんな振る舞いが生まれることを想定している商品です。

旦那さんがコーヒーが好きで、ただたくさん豆を買ったり道具を揃えても棚にしまってるだけだと奥さんから「そんなことばっかりにお金つかってないで」といわれたりする。

それを、目の前でコーヒーを入れてあげると、奥さんもまんざらでもなくなるみたいな。お互いに、結果、いい感じになるっていうのが狙いで。

旦那さんからしたら好きなものをディスプレイしつつ、披露する機会も得られる。
自分が好きだから自然とやりたくなって、奥さんからしてもコーヒーをいれてもらえるのがうれしい、みたいな。

ICCAの家具が暮らしの中に取り入れられることによって、何かいい関係をつくるふるまいが生まれるような、そんな提案をするために試行錯誤してます。

■安心して使える家具
ICCAの製品はコストや効率性ではなく、環境や使う人の安全を第一にして製造しています。溶剤はエコなものを使い、しっかりと洗浄し、さらに表面を研磨しブラッシングし、クリーニングした上で世の中に出しています。
子供も安全に使えるということころを目指して製造しています。

-人材不足と言われる中で、日本社会の現状をふまえて、技術継承と人材育成の問題は考えたことがあるでしょうか。

照明や金具の製造開発の関係で日本の工場を巡ったことがありますが、その現状はかなり厳しいものがありました。仕事が少なくなっている上に、高齢で工場を畳んでいくため、同時にその技術も失われていっています。ひとつの製品をつくるのに複数の工場が関わっていることが多く、ある工場が潰れると、ドミノ倒しのように倒れていってしまい、すでに手遅れな業界も少なくありません。

私たちができることは、まずは和のものに光を当てていくこと、世界的に和のデザインのマーケットはまだまだ小さい。その認知を広げていき、需要を創出することが、そのような工場や職人を再生させていくことにつながると考えています。

-今後の目標を教えてください。

和家具を世界へ伝えていく。世界のスタンダードな家具として、認知されるように頑張りたいと思っています。

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POP UP STORE in HONGKONGは6月16日まで開催されておりますので、お近くの方はぜひ足をお運びいただけると幸いです。